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-CASE16-

住宅取得資金の贈与と相続紛争の回避方法問題相談事例


相談者M様
私は38歳になる会社員です。名古屋出身で東京の大学に入学を機に、もう上京してから20年が経とうとしております。
私の家内とは8年前に職場結婚をして、昨年末にやっと子供(娘)を授かる事が出来ました。
本日は、やっと授かった子供の将来と、今の賃貸住宅では手狭で毎月の高い家賃が無駄な事だと感じたので、これを機に心機一転して新築マンション4,000万円で購入したいと考えて、このたびの相談会に参加させて頂きました。
ただ、私の会社も輸出関連の製造業なので、現在は円安で落ち着いてはおりますが、これからの将来を考えますと何が有るか分からず、家内も長い住宅ローンには不安を感じております。
私がマンションを買った場合は頭金が500万円程度ですから、住宅ローンが3,000万円以上も残り、私が支払っていけるのかで悩んでいます。
私も住宅購入の事で気になりましたので、職場の気の合う同僚から話を聞くと、同僚自身はマンション購入時に自己資金が少なかった状況下で、住宅ローンを組んだみたいですが、毎月の返済が厳しく、同僚にはかなりの負担になっているみたいです。
同僚に言わせると、「住宅を購入してから、毎月の支払いを考えた事で、自分の小遣いが減らされ、昼食は弁当にしなければならず、奥さんも保育園に子供を預けてパートに出なければいけないみたいで、実家への帰省やレジャーも我慢している」と、同僚の悩みにも似た苦労話を聞かされました。
私としてもマイホームは欲しいですが、家内に苦労をかけたり、娘に共働きで寂しい思いをさせたくはないと考えております。
この件で両親に相談したところ、もし、私が住宅購入をするのであれば、その購入資金の一部を援助しても構わないと言われました。
ただ、私もその事で支払う税金についても分からず、それで両親には迷惑もかけたくないし、実家で同居していて不仲な弟に文句を言われたくも有りません。
それから、今回の住宅資金の援助について両親に相談したところ、父親が5年程前に摘出手術した癌が再発したらしく、もう年も70歳を過ぎていますし、いくらか実家には不動産と、多少の預貯金に有価証券も有るので、これからの相続と万が一に時の母親の将来についても相談を受けました。
これから申し上げることは、私の家族の恥ずかしい話なのですが、私の母は父と再婚して私達を産んでくれました。
父親には前妻との間に、私と腹違いの兄がいるらしく、その為に相続で揉めるのではと考えています。
また、私と不仲な弟は自堕落生活をしており、今年で35歳になっても所帯すら持たず、無職で両親の脛をかじっていて、ついこの間も、父親に頼んで600万円を超える遊興費で作った借金を肩代わりしてもらったみたいです。
父親が、これまで何度も注意しても弟は取り合わず、最近では逆に父親に恫喝する有様になっていて、その時は私も電話で注意をしましたが口論になってしましました。
それから、私の母親は鎌倉出身で兄弟も神奈川に多く住んでいて、本来なら前妻も住んでいる名古屋から早く出たいとも言っておりました。
父親としても、この先は母親を同居している弟に任せるわけにもいかず、もし出来るのであれば将来的には、私に母親の面倒を見させたいようです。
それと、父の財産についても母親の気持ちとしては、前妻との子供に財産を渡したくないようで、その事についてもご相談したかったのですが・・・
先生には難しい相談事でご迷惑でしょうが、私は如何すればよろしいでしょうか?

講師(司法書士)
お父様からの住宅取得資金の贈与を受けるとしても、まずは、お父様の将来的な相続、さらにはお母様の老後の暮らしについても考える必要がありそうですね。
ところで、お父様と相続に関しては前妻のお子さんの件も含めて、ご心意をお聞きになられたことはございますか?

相談者M様
私も電話で聞いたことですが・・・父親に言わせると、前妻とは、前妻側に問題が有って別れたと聞きましたし、父親としてもその問題も有りますので、母親の将来を考えて母親と私に財産をなるだけ残したいと言っておりました。

講師(司法書士)
そうですか・・・お母様におかれましても、これからの生活の問題も考えなくてはならないでしょうし、弟様の行状についての問題も有るでしょうから、今回の場合はお父様に御遺言を残していただければ、何かと御安心だと思います。
M様としても、前妻のお子様が万が一にも、皆様に不利益な相続の主張をしてくるかもしれないでしょうし、お父様には酷な話かもしれませんが、御家族の「決り事」として遺言書を作成していただけるように、M様からお父様にお話してみては如何でしょうか・・・

相談者M様
そうですね・・・分かりました。
私から母の将来の為にも、これから自宅に戻りましたら電話で話してみます。
ただ、父の意思が何より一番だと思いますが、その場合はどのような内容の遺言書を作ってもらうのが良いのでしょうか?

講師(司法書士)
M様が言われましたとおり、今回はお父様のご意思が一番大切ですが、前妻のお子様と弟様の問題を留意した内容でお話をされてみては如何でしょうか・・・例えば、不動産(御自宅)についての相続はお母様に、若しくはお母様と弟様との共有が良いかと思います。
もし、弟様の単独相続にしてしまうと、御実家を担保に弟様が借金してしまう可能性が有りますし、もっと酷い場合は借金が原因で競売になったり、売却するかもしれません。
何れにせよ、お母様がご健在中に御実家の事でトラブルが起きるのが、何より、お母様にとっては心苦しい事でしょうから・・・かりに、お母様がお一人になられたとしても、その際にお父様から譲り受けた財産と、お母様御自身がお持ちの財産についても、先々の事を視野において検討しておく必要が有るかと思います。
現在もお父様に対しても恫喝するような弟様ですから、お母様に対しても同様な対応をする可能性も考えられますし、お母様におかれても同居していれば良くも悪くも同じ息子様ですから、何らかしらの対策はお取りになられる必要が有るかと思います。
この際、お父様の預金につきましては・・・せっかくのお父様からのお申し出ですから、M様が購入しようとされているマンションの取得資金の援助をお受け取りになり、相続税対策を取り入れたお手続きを行われたら如何でしょうか?
現行の税務制度につきましては、後ほど、税理士さんからご説明をいただきますが、住宅取得資金の贈与を受ける際に、お父様にご了解を得て、今からお母様若しくはM様で財産管理を行い、将来の為にも相続税対策を始める事が一番だと思います。
例えば、御実家が不動産の相続税評価が5,000万円程度だったとしましょう。
その場合、まずは前妻のお子様の事は除外しておいて、お母様と御兄弟で8,000万円の相続税の基礎控除が有ります。
つまり、まだ3,000万円程度の基礎控除が残っておりますので、それを有効活用してみては如何でしょうか?
まずは、お父様のお申し出通りにご援助を受ける・・・マンション購入時に「住宅購入資金の贈与」(非課税内)700万円分と、先程の3,000万円弱程度の基礎控除内で、お父様にも所有権持分を入れて貰い、御実家の半分を弟様に遺して貰うかわりに、M様が購入するマンションの所有権持分は遺言書でM様に遺して貰ったら如何でしょうか・・・これならば、御実家とマンションも概ね評価上は同額程度で妥当性もあり、何かとメリットも多いかと思います。
それと税制上の要件は有りますが、お父様の預貯金でお孫様つまりM様の娘様に、新しく制定された「教育資金贈与」をお使いになられて1,500万円を信託銀行で準備して貰うのはどうでしょうか?
これらでお手続きを進められたら、マンション購入に対する不安、遺言書の内容、お父様の相続税対策の3つの事が解決し、正しく「一石二鳥 どころか 一石三鳥」になるのではないでしょうか?
その上で、お父様の財産を生前贈与(年間110万円)で皆様に分け与えるお手続きと、お母様との御夫婦の共有財産口座に振り替えて、先に述べさせて頂きましたとおり、その口座を管理した上で、お父様に遺言書に「妻に遺す」と・・・つまり、お母様に遺して貰えば安心なのではないのでしょうか?
M様ご夫婦も、御両親に思いやりとしてマンション購入資金の援助、お子様の将来の教育費をお受け取りになられたら、お母様の老後の面倒を見る励みになるかと思います。
それでは、これらの事を税理士さんに税務的な見解からアドバイスをして頂きましょう。

講師(税理士)
まず、住宅取得資金の贈与については、購入する家屋や贈与を受ける方に幾つかの要件がありますが、M様のお話をお聞きする限りですと概ね要件を全て満たしているかと思われます。
ただし、この制度を適用するためには、仮に贈与税が発生しない700万円以内の贈与であったとしても、住宅資金贈与を受けた翌年2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告を行う必要があります。
次に、教育資金の贈与についてですが、これは最近に制定された新しい制度です。
簡単に内容を説明いたしますと、平成25年4月から平成27年12月までに金融機関と一定の信託契約に基づき、父母若しくは祖父母から教育資金の贈与を受けた場合は、その総額で1,500万円までは非課税扱いとなります。
ただし、教育費の贈与をお受けになられた方が30歳に達して、まだ贈与の残高金が残っていた場合は、その残っている贈与金は贈与税の対象となります。
こちらも、教育費の贈与手続きを終えた翌年2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告が必要となります。
今回は住宅取得資金と教育資金の生前贈与を行うことに因って、お父様の相続課税対象の財産を少なくして、それ以外の金融資産についても講師の司法書士さんのご提案通りに、円滑にお手続きを行われることをお勧め致します。
もし、現在のままで何かしら相続対策しなかった場合、万が一にも、お父様に何かあれば、ご相続手続きでトラブルが起きることは容易に考えられます。
その場合は、御家族の皆様は、目が飛び出るほどの相続税の請求が届くし、前妻のお子様も含めて相続争いになるかと思われます。
そうすると、お母様もお悩みになられるでしょうし、皆様もご心労になられると思います。
この機会に御両親とご相談された上、しっかりお手続きを行われることをお薦めいたします。

相談者M様
そうですね・・・両親とは早急に相談して、あらためてご連絡をさせて頂きます。

相談後記
それから一週間程してから、M氏は名古屋から上京してきた御両親を伴われて、講師である司法書士と税理士に御面談し、御自身のマンションの購入資金の援助に遺言書の作成と、講師から提案を受けたアドバイスの内容を大筋として、これからの相続対策のお手続きをご依頼なされました。
現在、御父様は将来の憂いなく、治療に専念されていらっしゃるものと思います。

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